古いスマホでは対応できぬ場合も
新型コロナウイルス感染の影響で各産業に影響が広がっている。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、とくに地方では経済が急速に復旧するとはいえない状況にある。自粛が広がり始めた3 月からすでに2 カ月以上が経過しており、急を要する事業者も多くなっている。しかし、支援策がまったく利用できない事業者も数多く存在しているほか、該当しても申請手続きの難しさから入り口で絞り込まれている状況がある。現在、法人・個人事業者向けの「持続化給付金」、個人向けの「特別定額給付金」の申請が始まっているが、とくに事業者のなかで「申請方法がわからない」「利用できる支援金がない」といった声もあいついでいる。早急に支援策を拡充することが待ったなしだが、現在利用できる支援制度をみてみたい。
現時点で事業者・個人それぞれが利用できる制度の概要を【表1】にまとめた。このうち事業者が利用できる支援金のおもなものは「持続化給付金」と「雇用調整助成金」の2つで、そのほかは融資制度となっている。各県や市町村によっては業種別に支援策を出している場合もあるため、参考として山口県と下関市の支援策を記載している。
持続化給付金の申請
「持続化給付金」は、中小法人・個人事業者、医療法人、農業者(農業法人)、漁業者、NPO法人などの法人も対象となっている(資本金10 億円以上の大企業を除く)。法人は最大200万円、個人事業者は最大100万円の範囲で支給される【表2】。
2020年1月以降で「ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している月がある」中小企業や個人事業者が対象だ。たとえば「昨年3月に100万円の売上があったものが今年3月は50万円だった」「昨年4月の売上と今年の4月の売上を比較すると半減している」といったように、同月を比較し、半減した月が1カ月でもあれば申請が可能だ。
しかし、オンラインのみで申請を受け付けており、パソコンを持たない年配の商店主や、パソコン操作に慣れていない事業者のなかには、申請をあきらめている人もいる。5月16日までに開設されたサポート会場は全国で59会場しかなく、「窓口に行けば申請用紙をもらえるようにしてほしい」という声も強かった。経産省の発表(18日付)では、5月末までに追加で406カ所にサポート会場を設置することが決まり、6月以降も順次会場を追加する予定のほか、サポート会場が設置されていない地域にはキャラバン隊を派遣するとしている。
各県のサポート会場の開設予定はインターネットで「経済産業省ホームページ」→「ニュースリリース」を開くと「持続化給付金の申請サポート会場を追加で開設します」というお知らせがある。そのなかに開設予定の会場一覧のページが掲載されている。
サポート会場は完全予約制となっており、①Web予約(「持続化給付金」事務局のホームページ→申請サポート会場)②電話予約(自動)0120-835-130(24時間予約可能)③電話予約(オペレーター対応)0570-077-866(受付時間平日、土日祝日ともに午前9時~午後6時)の3つの方法で予約しなければならない。
ただ、開設が5月中旬から月末になる会場も多く、6月にならなければ順番が回ってこない事業者も続出するとみられる。急ぐ場合はオンライン申請をするしかないのが現状だ。
実際に申請してみた
本紙では個人事業者(青色申告)の協力を得て、申請に同席させてもらった。最初はスマートフォンで申請を開始したが、古い機種だったためか途中で記入ができなくなりパソコンに切り替えなければならなかった。
まず「持続化給付金」で検索すると申請用のホームページが出てくる。「申請する」というボタンを押すと仮登録情報の入力画面が出てくるので、「個人事業者」「法人」どちらかを選んで、メールアドレスを入力し、登録する。
するとすぐに事務局からメールが届いた。メールを開き、そこに記載されているURLをクリックすると設定画面に入る。そこでログインIDとパスワード(8文字以上)を自分で設定(忘れないようにメモ)し、「登録」のボタンを押す。
「宣誓」にチェックする画面が出てくるので、7項目にチェックし、「同意」を押すと基本情報の入力に入る。
①屋号・雅号、②申請者住所、③書類送付先、④業種(大分類→中分類→小分類の3段階で選ぶようになっている)、⑤創業日、⑥代表者氏名、⑦代表者生年月日、⑧代表者電話番号、⑨代表者メールアドレスを入力する。このとき、業種を選ぶのに手間取ったのと、屋号や創業日など必要項目を事前に確認しておくことが必要だった。
入力を終え「次へ」を押すと、「名義が確定申告と同じかどうか」「代表者氏名と口座名義が一致しているか」などのチェック項目が出てきた。これをすべてチェックすると、計算方法の表が出てくる。
協力を得た個人事業者は、3月の売上が前年度比で50%以上減少した。そこで、「2019年の年間事業収入」「売上が減少した3月の収入」「前年度の3月の売上」を入力すると、「昨年の年間収入」―「3月の収入×12カ月」の計算がされ、昨年の年間事業収入との差額として2000万円近い金額が表示された。それに対して給付予定額は「100万円」だ。
給付対象になることが確認できたので、今度は口座情報を入力する。「普通預金」「当座」のどちらかを選択し、金融機関名、金融機関コード、支店名、支店コード、口座番号、口座名義(申請者と一致していなければならない)を記入する。
今回、ここでスマートフォンの機種の関係なのか、金融機関の選択ができなくなり、いったん中断せざるを得なかった。基本的にパソコンで申請をおこなった方がスムーズだといえる。
次は証拠書類の添付だ。「通帳の表面・口座番号や支店名が記載されたページ(おおむね表紙の裏側にある)」の2枚、「令和1年分の確定申告書」「令和1年分 所得税青色申告決算書(2ページ)」「今年3月の売上台帳」「運転免許証などの証明書」の写真を撮影して添付した。
途中、「確定申告の収受印がない場合、納税証明書かe-Taxの受信通知が必要」という記載が出てきて慌てたが、調べてみると「電子申告(受付)日時、受付番号」が記載されている場合は収受印がなくてもよいということがわかり、そのまま添付した。
すべて入力が終わると、確認画面ですべての項目をチェックして、「申請」のボタンを押して終わり。
もし書類などに不備がある場合は登録したメールに連絡があるそうだ。そのさいは再びマイページに入り、該当箇所を訂正して申請しなおすことになる。順調に受けつけられた場合、振り込み通知が約2週間後に郵送で送られてくるという。通知が届く前に振り込まれる場合もある旨が記載されていた。また、給付対象外とみなされた場合も「不給付通知」が郵送で届くという。
書き込みの途中で書類がそろわなかったり、トラブルがあるなどで申請手続きを中断しなければならない場合、ログアウトしても、途中まで書き込んだ情報はマイページに保存される。再び開始するときは、マイページにログインすれば残りの手続きをすることができた。
雇用調整助成金の申請
雇用調整助成金の申請もあいついでいる。新型コロナウイルス感染症に関連して制度が拡充された2月14日以降、5月18日までに全国で2万4797件の申請があり、うち支給が決定したのは1万2201件となっている。
手続きの複雑さが申請のネックとなっているが、「社労士も順番待ち」といわれる。一定規模の中小企業でも苦労しており、小規模な飲食店などでは申請できず、アルバイトなどを解雇せざるを得ない状況もある。大手企業が手続きせずに、労働者に有休を使わせるといった事例があるのは論外だが、中小・零細企業に対してはサポートが必要だ。
同制度は2020年4月1日~6月30日まで緊急対応期間となっている。この期間は従業員を解雇しない場合、休業手当(賃金の60%以上)を支払った分の10分の9の助成を受けることができる(大企業は4分の3)。
新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動が縮小している場合(例観光客のキャンセルがあいついだ、市民活動の自粛で客数が減少した、行政からの営業自粛要請を受け自主的に休業をおこない売上が減少したなど)は特例が適用される。
条件は、売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近1カ月間(計画届を提出する月の前月)の値が前年同月比で5%以上減少していること。雇用保険適用事業主であること。
1年以内にこの制度を利用し、クーリングオフ期間の事業者も今回は利用が可能だ。また、通常は対象外のアルバイトなど雇用保険被保険者でない労働者の休業も対象になるほか、たとえば飲食店で夜のみ休業するケースや、ホテルなどで施設管理者だけが出勤し、その他の従業員は短時間休業するなど、部分的な短時間休業も対象となっている。
おおまかな流れは、「休業計画の策定・労使協定」→「計画届の提出」(緊急対応期間については、すでにおこなった休業について事後提出も可能)→「休業の実施」→「支給申請」(2カ月以内)→「支給・不支給決定」となっている【表3、4参照】。
事前に、労働組合がある場合は労働組合と、ない場合には労働者の過半数代表と書面で協定を結ぶことが必要だ。下関市内の場合、従業員の生活を守るために休業手当を賃金の80%前後支払う事業者も少なくないようだ。
ハローワーク下関では支給申請から2週間程度で支給できるようになっている。提出書類が複雑なので利用を考えている場合はハローワークで相談できる。
該当せぬ事業者も多く
さまざまな支援策が報道されているが、実際には支援策に該当しない事業者の方が多いのが実態だ。「持続化給付金」を見ても50%以上減少していなければ対象外だ。半減している事業者にとって一回きりの給付では焼け石に水なのはいうまでもないが、何とか状況を打開しようと営業している事業者はなおさら支援を得られない状態になっている。
「零細のため少人数で回しており、会社に電話やメールなどが来る以上、休業させることができず、雇用調整助成金も利用できない」という事業者もあり、あとは融資=借金をするしかない。
ある事業者は「融資を受けられる場合はまだましだ。今後、どのくらいで経済が復旧するのか見通しもないなかで、借金もできない事業者が大半だ」と話す。6月以降、倒産、廃業、失業、自殺などが急増するとも語られている。全国がコロナ禍に見舞われているなかで、国内企業の90%以上を占める中小・零細の事業者を支えるつもりがあるのか、政府の姿勢が問われている。