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PCR検査の徹底と感染者隔離で封じた韓国のコロナ対策 

 韓国では15日におこなわれた総選挙(定数300)で文大統領率いる与党「共に民主党」が180議席を獲得して圧勝したが、要因の一つに新型コロナウイルス対策の成功が国民の支持を受けたことがあげられている。世界的にも注目されている韓国でのコロナ対策についてみてみた。

 

ドライブスルー検査を実施した韓国

 韓国の中央疾病対策本部は19日午前10時に、午前0時時点での感染者数は1万661人で、前日より8人増えたと発表した。新規感染者8人のうち、5人は海外からの入国者だった。死者は前日から2人増え計234人になった。1日当りの新規感染者数が一けたを記録したのは2カ月ぶりで、終息局面に入っている。

 

 他方で日本の感染者数は19日に1万361人にのぼり、死者は161人だ。直近は1日の新規感染者数が三けた台で増えている。

 

 韓国で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは1月19日だった。ちなみに日本では1月16日に厚労省が神奈川県在住の中国人男性(30代)が新型コロナウイルスに感染していたと発表したのが最初だ。

 

 韓国ではその後感染の早期発見や早い段階での医療措置を実施し、感染拡大を防止するために迅速かつ広範囲な検査を実施した。3月3日には文大統領が「ウイルスとの戦争に突入した」と宣言した。安倍首相が7都府県に緊急事態宣言を発令したのは4月7日、対象を全国に拡大したのは4月16日。

 

 韓国での検査数は3月6日に1日1万8199件のピークに達し、その後も1日1万6000件台の検査がおこなわれ、4月4日時点では累計約44万人以上が検査を受けている。日本の累計検査数の約13倍以上にあたる。

 

 韓国の1日当りの新規感染者数は2月29日の909人をピークに減少し始めた。最初の感染者が確認されてから1カ月余りしか経過していない。その後の新規感染者は韓国全体で4月12日には25人、13日=27人、14日=27人、15日=22人、16日=22人、17日=18人、18日=8人となり、この1週間で合計149人だ。日本では18日だけでも感染者数は566人にのぼった。

 

 韓国では3月31日現在で全国に341カ所の「国民安心病院」や612カ所の「選別診療所」があり、新型コロナウイルスの検査や診療をおこなっている。

 

 「国民安心病院」は、院内感染を防ぐために、呼吸器疾患を抱えている患者を外来から入院まで他の患者と分離して診察する病院だ。韓国政府は発熱、咳、呼吸困難などの症状がある人のなかで、疫学的関連性(海外への渡航や大邱・慶尚北道地域への訪問、感染者との接触)がない場合には「国民安心病院」を、疫学的関連性がある場合は「選別診療所」で診療を受けることを奨励している。

 

 2月18日には大邱市で宗教団体の大規模な集団感染が起こった。このとき政府は宗教団体から31万人もの信者の名簿を提出させ、感染の疑いがある9万4000人の信者の検査と追跡をおこなった。陽性患者は急増し、3000人にものぼり、病院のベッド数が足りない事態が発生した。

 

 これに対して韓国政府はそれまでは感染者全員を入院させていたが、3月1日には軽症者は病院とは別の隔離施設「生活治療センター」に収容する方針を出した。

 

 軽症者はバス・トイレ付きの個室に収容され、三度の食事は個室に運ばれ、医師・看護師も常駐していた。さらに感染者数がピークに達した時点では軽症者に対して「自宅療養」も実施した。「自宅療養」の患者には自治体が生活必需品をそろえた「自宅隔離セット」(レトルトご飯・インスタント麺・水などの食料品、歯磨きセット・石けん・トイレットペーパー・ウェットティッシュ等の衛生品など)を無料で提供した。市の職員が検温チェックもおこなった。

 

 また、保健所以外でも70カ所以上で「ドライブスルー検査」がおこなわれ、これに「ウォーキングスルー検査」も加わった。「ドライブスルー検査」は屋外に設置している検査施設で車に乗ったままで検査を受けられる。検査時間は約10分。「ウォーキングスルー検査」は歩いて公衆電話ボックス型の検査ブースに入り、医師が外側から検体を採取する。検査時間は約3分。検査結果は1~2日後にメールか電話で知らされる。

 

 こうした検査は、感染者との接触後に発熱等の症状がある場合や、感染が疑われるケースは「無料」で受けられる。これに該当しない場合でも16万ウォン(約1万4000円)払えば誰でも検査を受けることは可能だ。

 

 「ウォーキングスルー検査」は3月16日にソウル市の病院が初めて導入して全国に普及し、3月26日からは仁川国際空港でも始まった。これはヨーロッパなど海外からの帰国者の感染者数が急増したためで、韓国政府は3月22日からヨーロッパからの入国者に対して全員検査をおこなった。だが、入国者が予想を上回ったため、検査人員が足りず計画を見直し、症状がある場合は空港内で、ない場合は帰宅してから3日以内に検査を受けるように変更した。

 

 さらに4月1日からは海外からの入国者はすべて「14日間の施設での隔離」と「費用140万ウォン(約12万4000円)の納付」を義務づけた。違反した韓国人は1年以下の懲役または1000万ウォン(約89万円)以下の罰金、外国人は即国外退去となる。

 

 不足するマスクについても、2月上旬には厳しく規制し、大量の買い占めには懲役2年以下または5000万ウォン(約450万円)以下の罰金を科した。3月に入ると国外へのマスクの郵送を禁止し、国民には生まれ年の末尾の数字でマスクを購入できる日を指定し、格安の高性能マスクが1週間に2枚買えるようにした。最近では政府からの公的供給以外に、市中のドラッグストアでもマスクが手に入るようになっている。

 

 長いあいだアメリカの疾病予防管理センター顧問を務めた感染症専門家のウィリアム・シャフナー教授は「韓国は新型コロナウイルス研究の立派な実験の場である。検査を多くするほど致死率が正確になり、全体図が完成できる」と韓国の検査体制を評価している。さらに「無症状、軽症の感染は新型コロナウイルス拡散のおもな要因であり、地域社会内の感染のおもな要因になるだろう」と警鐘を鳴らしている。

 

 またWHOのテドロス事務局長も3月16日、「すべての国に訴えたい。検査、検査、検査だ。疑わしい例すべてに対応してだ」と検査の重要性を強調した。

 

 日本では最初に感染者が確認されてから3カ月が経過するがいまだに感染拡大の勢いが増しており、韓国でのコロナ対策のいいところは貪欲に学び、取り入れる必要性が高まっている。

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