れいわ新選組は17日、東京都港区赤坂の党本部で、次期衆議院選挙で首都圏の選挙区に擁立する第1次公認候補予定者7人を発表した。翌18日には静岡県庁で静岡2区の公認候補1人を発表し、月末までに各選挙区に出向いて計13人の第1次公認候補者すべてを発表する予定だ。候補者発表と同時に、各地で地元に根を下ろした活動が始まり、新旧の政治勢力の新陳代謝を促す国民世論をどこまでつくり出せるかが鍵となっている。
冒頭、山本太郎代表は、実質GDP(国内総生産)が年率換算でマイナス6・3%(内閣府発表)に落ち込んだことに触れ、「消費税増税による経済の後退がはっきりと確認されただけでなく、これから感染拡大が防げるかどうかという状態にある新型コロナウイルス問題など早急に対応すべき問題が数々ある」とのべ、新型コロナ対策への積極的な財政出動を含む経済対策を求める要望書を政府に提出したことを明かした。
次期衆院選では「消費税5%」を旗印にして野党共闘を目指すとともに、その共通政策で一致できない場合は、独自に最大100人の候補者を立てて単独でたたかう方針をのべた。ただ、野党間の調整については「解散風が吹き、危機感が強まらなければ具体的には進まない」との見方を示し、候補者を発表して独自にたたかえる体制づくりを先行して進めていく考えをのべた。
第1次公認予定候補者は、北海道1人、関東7人、東海2人、近畿1人、中国1人、九州1人の合計13人。600人をこえる一般公募のなかから面接を重ねて選考し、最終的に100~131人をめどに順次発表していく予定だ。
発表した第1次公認候補者は、首都圏ブロックからは、昨年参院選に出馬した渡辺照子(小選挙区東京10区)、辻村千尋(東京8区)、三井義文(千葉9区)の三氏に加え、櫛渕(くしぶち)万里(東京22区)、太田和美(千葉8区)の元衆議院議員二氏、さらに元ゴールドマン・サックス証券社員の北村造氏(東京2区)、元K―1選手でジム経営の田島剛氏(埼玉2区)の計7人。
また東海ブロックでは、元県議で訪問介護所経営の大池幸男氏(静岡2区)を選出した。
選考の基準について山本代表は「熱意が本物であるかどうかが一番の基準。だが熱意や雰囲気だけでは勝てないのが衆院選であり、腕に覚えがある人や、丁寧に地元とのやりとりを続けているなどの要素も加味した。(全国比例がある)参議院とは違い、衆議院は小選挙区に根を張って地道に票を積みあげなければ勝負にならない。地元有権者のみなさんとの丁寧なやりとりやポスター掲示などの活動を見て、候補者に小選挙区でたたかうための運動量や力が足りないと判断した場合には公認をとり消すこともありうる。一人一人がそれくらいの背水の陣を敷いてたたかっていく」と緊張感をもって挑む覚悟を示した。
それぞれの選挙区に他の野党候補者がいることについては「現時点でそれぞれの立場は同じ。消費税5%で一致して政権交代の道を付けていくのであるならば調整の余地があるが、各候補者の地元での活動が進めば進むほど降ろしづらくなることも考えられる」「私たちが独自でたたかう場合、自民党を利するのではないかとの批判もあるが、野党側が政権交代を目指さないのであれば新しい政治と古い政治の対決ということになる。自民党も倒しにいかなければならないが、野党側にも自民党となんら変わりのない人もいる。民主党政権時代の清算がされていないことに関して選挙でジャッジされるべきであり、古い政治の清算を求めるという選挙戦を展開していくしかない」とのべた。
また公認候補予定者のうち、かつて旧民主党に属していた櫛渕、太田の両氏は、立憲民主党中枢が消費税5%に乗ることに及び腰であることについて、「消費税増税の三党合意をしてきただけに政策転換のロジックを考えているのではないか。景気が悪化するなかで、消費税5%を求める国民の声は今後強まらざるを得ない。その声に乗っていただけるように働きかけをしていきたい」(太田)、「民主党政権時代は社会保障と税の一体改革にものすごい時間を費やし、分裂の原因にもなったと認識している。私は民主党時代に馬淵議員が消費税増税反対を掲げて代表選に出たときに推薦人の1人になった。だが当時の消費税増税法に付則した景気条項は2015年の安倍政権下で削除され、同じく議員歳費2割カットの合意も消えた。逆進性の高い消費税の負担軽減策としてあった低所得者層への還付策も消え、そしてなにより消費税が社会保障に使われていない。増税当時の前提は大きく崩れており、現実を見て行動を起こしてもらいたい」(櫛渕)とそれぞれ見解をのべた。
以下、首都圏と静岡2区の公認予定候補者の略歴と、会見での発言要旨を紹介する。
◇ 東京10区 渡辺てる子
庶民の庶民による政治を掲げて昨年の参院選に出馬した。その過程で派遣労働者やシングルマザーなど多くの人たちから“あなたは私たちの代表だ”との熱い支援の声をいただいた。この支援を力にかえて再度挑戦したい。消費税増税後、人々の暮らしはますます逼迫しており、この暮らしを底上げするために当事者による当事者のための政治の実現を訴えたい。消費税廃止、全国一律1500円の最低賃金制度など暮らしの底上げをはかるれいわ新選組の政策を訴えていく。元派遣社員、シングルマザーの一人として、貧乏人の怒りをパワーにかえてたたかい抜き、国会を目指したい。
◇ 東京22区 くしぶち万里
衆議院議員として3年3カ月、民主党政権時代に永田町で活動してきた。それ以前は、大学研究員を経て、活動の原点であるNGOピースボートで17年間、世界80カ国を回りながら、国際交流、人道支援、環境保護に携わり、ソーシャルツーリズムを需要化することに従事してきた。その活動のなかでグローバル社会のなかで世界中に広がる貧富の格差を目の当たりにした。
当時日本でも3万人が自殺する状況にあり、国際支援の現場でも1日わずか2㌦(220円)以下で生活する人がたくさんいる。日本の課題は世界の現状とつながる問題があると気付いたのが政治を志したきっかけだった。
本来、経済社会は人の暮らしのためにあり、市場はその創造力を育むためにある。人間性を回復し、環境と調和し、いかに生存を守るのかということこそが大事なのではないかと思い、政治の世界に飛び込んだ。GDPだけを追求する古い固定概念に縛られるのではなく、人間がどうすれば健康に豊かに生きていけるのかという指標を持った政治をつくりたいとの志で政治活動をしてきた。
だが衆議院議員時代に身を置いた永田町は、別の論理で動く、古い慣習がはびこる苦しい世界だった。政権与党にありながら、高い本気度と熱意で国民に真剣に向き合う姿勢が感じられなかった。私にも足りなかった。この苦悩の日々を日本の変革に繋げていくための答えを与えてくれたのが、参院選での山本太郎代表の行動だった。たった1人の国会議員が熱意をもって本気を出せば、国民は一緒に進んでいくことができることを示した。
マイノリティー(少数派)として永田町から最も遠くに置かれていた障害者の人たちを、高齢化社会のマジョリティー(多数派)のフロントランナーと位置づけてたたかったことに心を打たれた。この本気度と熱をもった人たちの仲間として、もう一度国政に挑戦したい。
現職時代には地球温暖化対策基本法に力を尽くし、再生可能エネルギー促進法の制定に尽力した。今国会でこの見直しが進められようとしている。気候危機から暮らしを守るCO2ゼロ、消費税ゼロ、教育費ゼロの三つのゼロ政策を掲げ、持続可能な日本をつくるために新たなステージで頑張りたい。
◇ 東京8区 辻村ちひろ
私は環境問題の畑で仕事をしてきたが、温暖化をはじめ地球環境は危機的な状況にある。いまだに日本では公共事業による自然環境の破壊がさかんにおこなわれており、そのような地方の大きな声を参院選で拾うことができた。
その後も地元からの悲痛な叫びがいくつも届いている。日本のみならず地球の環境が守られていくためには、しっかりとした環境政策が必要であり、国が公共政策としてグリーンインフラを整える必要がある。
里山で暮らしている動植物の五割が絶滅危惧種であるという現状を変えるために、積極的に公共投資をして里山を回復させ、第一次産業である農林水産業、またエネルギーも小さな仕組みの中で回し、自給していくという大きな転換をしていかなければ日本の自然環境も地球の環境も守れない。
東京8区に含まれる杉並区は私の生まれ育った故郷であり、地域活動にかかわるなかでもさまざまな貧富の格差があらわれている。それらの問題も一つ一つ解決していく。
◇ 東京2区 北村イタル
大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券で働き、現在は不動産投資ファンドでサラリーマンとして働いている。リーマン・ショックをへて、アベノミクスが与えた影響を目の当たりにしてきた。私がとり扱ったのは不動産と金融だが、アベノミクスでは膨大な資金が供給され、株価も不動産価格も大きく上がった。だがこの政策は、持てるものをより豊かにする一方、持たざるものは置いていかれる政策だった。サラリーマンとしてはその片棒を担ぐしかなかった。この国に1億円以上の資産を持つ富裕層は、リーマン・ショック後3~4割も資産を増したが、一般の会社員の生活水準は変わっていない。この政策は、お金の回し方が完全に誤っていると断言できる。私は自由主義経済を信奉しているが、政策のゆがみでお金持ちが富を増やす一方で、政策のゆがみで貧しい人が溢れることは絶対に許してはいけない。
私は毎朝満員電車で通勤し、夜遅くまで働くサラリーマンの一人として、サラリーマンのプライドをもってこの悪しき政策とたたかっていかなければいけないと決意している。昨年末に亡くなった父・北村肇は、ジャーナリストとして『サンデー毎日』や『週刊金曜日』の編集長を務めた。父は亡くなる前に「人は何のために生きているのかようやくわかった。人は誰かを幸せにするために生きている。社会や世界の人々を幸せにできるならそれにこしたことはないが、たった一人でもいい。目の前にいる人を幸せにすることが人の生きる理由だ」といい残した。父のこの思いとともに、この街にはびこる不条理や貧しさとたたかい、この国に生きる一人でも多くの人を幸せにするためにたたかいに全力で挑む。
◇ 埼玉2区 田島つよし
私はオランダのボスジムに所属する元K―1選手で、現在は赤坂で格闘技ジムを経営している。れいわ新選組の政策でもっとも共感するのは消費税廃止だ。消費税は消費者だけでなく経営者側も圧迫している。消費税が10%に上がると、去年までの資金繰りで同じ状態の経営をすると、売上は減っているなかで税率だけ上がり、経営をものすごく圧迫する。他の経営者間でも、社員を雇うときに消費税を外注費として消せる派遣雇用を選んでしまう話になる。消費税が景気を圧迫しているのは間違いのない事実だ。実際に赤坂のジムでも、これだけ都心でありながら「お金がない」と退会する人もいる。消費税は一刻も早く廃止すべきであり、最低でも5%に減税し、消費を活性化させることを実現したい。
私には2人の娘がおり、今春高校に入学する。学費の面で日本はものすごくお金がかかる。進学を目指すための塾にかかるお金はかなりの負担だ。「教育費の無償化」は所得格差に関係なく、教育の機会均等をはかるうえで非常に重要なものだ。教育費無償化や幼保無償化といいながら学費を無償化しても入学金が上乗せされたり、民主党がはじめた住宅手当でも一律で新築住宅に15万円の助成をつけたが、工務店が建築費にその金額を乗せてしまったり、助成のための申請料5万円をとられるなど、個人に直接届かない状況もあった。これらの助成が個人に直接届く制度にするために、細かい部分も詰めながら新たな制度をつくり上げていきたい。
◇ 千葉8区 太田かずみ
GDPの年率換算マイナス6・3%と、消費税増税の影響で個人消費が落ち込み大幅なマイナスに転じたとの報道がなされた。現在の日本は国民所得は下がり続ける一方、消費税は上がり、一部の人だけが果実を独り占めして格差が広がっている。あれほどの痛切な原発事故の経験は片隅に追いやられ、原発の再稼働や新設にまで政策の再転換が図られようとしている。だが現在、一強といわれる自民党政治に対抗できる勢力がないのが現状だ。他弱といわれる既成野党は、自己の正当性ばかりを主張し、足の引っ張り合いばかりしていては国民は浮かばれないと私は思う。だからこそ、国民の生活を確実に底上げする共通政策を掲げて野党が結束していく必要がある。
私は2012年6月の衆院本会議における採決で、政治生命をかけて消費税増税関連法案に反対の1票を投じた。また2011年の原発事故の経験から、二度と同じ過ちをくり返してはならない、生涯を通じて子どもたちの未来に原子力のない社会をつくりあげていくことを決意している。またロスジェネ世代として、初めての国政選挙では「負け組ゼロへ」を掲げて就職氷河期世代の現状を訴えてきた。野党が迷走するなか、私は今一度政治家の原点に立ち返るべきだと感じている。
そのために、政治に捨てられたと感じている人たちの声を拾い、その人たちのために本気でたたかう政党はれいわ新選組であると確信している。次期衆院選のたたかいを進めるうえで、千葉8区から「消費税は5%に減税する」という旗印が野党の共通政策となるような活動をしていきたい。生まれ故郷から大きなうねりを起こしていく決意だ。
◇ 千葉9区 三井よしふみ
私はもともと銀行員をしてきて、定年のない仕事に就いて悠々自適な生活をしようとコンビニ店主になったが、そこは強い者が弱い者を収奪する世界だった。この問題を解決するために活動していたところ、山本太郎さんに「問題の当事者が国政の中心に行くべきだ」といわれ、昨年の参院選での突然の出馬となった。だが選挙のなかで日本の状況を知るにつけ、問題はコンビニだけでなく、日本社会全体に強い者が弱い者を収奪する構図が蔓延していることを痛感した。現在の仕事である軽量貨物運送業をしていても、この社会を支えているのは誰なのかと考える。表面的にはマスコミを通じて「日本は立派だ」という著名人が出てくるが、本当の日本の良さは日々の生活を真面目に送っている人たちがつくっているのにもかかわらず政治がそれを忘れている。
日本だけなぜデフレが続くのか。それは政治の経済政策が間違っているからにほかならない。この問題に直接立ち向かっているれいわ新選組で自分の力を尽くしたい。政治は国民を守るためにある。そして私たち国民を豊かにするためにある。だが、今の政治は与野党ともにこの問題に真剣に立ち向かってきただろうか。私はコンビニの世界で働き、日本は間違っている、壊れていると強く感じている。れいわ新選組の強みである「当事者」たちが永田町で真実を語り続けることが日本のためになると思い、ふたたび立候補を決意した。
◇ 静岡2区 大池ゆきお
静岡県の島田市議会議員を3期、県議会議員を2期の約20年間政治活動をしてきた。約5年前の県議選に落選して浪人生活を送ってきた。
昨夏の参院選におけるれいわ新選組の公約や政治活動の模様を見て胸を打たれ、衆院選では自分も仲間入りをしてたたかいたいと思い、公認候補に公募した。
静岡2区には浜岡原発がある。地元の国会議員は原発再稼働容認の立場にいる。原発は国策だ。国会議員が方向性を決めるものであるなら、第2区の国会議員として浜岡原発を廃止、廃炉にすることを国会で訴えたい。私たちの故郷である静岡を、不幸にして事故の犠牲になった福島のようにさせないという強い思いで国政に挑みたい。
また、浪人生活中に訪問介護事業を始めた。政治家として介護保険制度の運用上の問題点を知ってはいたものの、ヘルパーの資格をとって現場に入るなかで、制度的に大きな欠陥があることを痛感する。とくに人を育てる面では、現場を支える介護職員の待遇は劣悪だ。夜勤を何度しても1カ月の手取りは20万円を切る。これでは若い人は結婚もできず、離職率も高い。介護保険制度を未来永劫続けていける制度に変えるための提言をしたい。
れいわ新選組が掲げる多くの政策はすべて推進すべきであり、山本代表が全国を駆け回って対話を続けているが、私も細かく地域に出向いてその政策を熱い思いをもって伝えたい。
県議として直面した地域の課題の解決のためにも、地域代表として役割を果たしたい。