「対外有償軍事援助(FMS)」による米国からの防衛装備品の調達状況について国会から調査依頼を受けていた会計検査院は18日、調査結果を国会に報告した。そこでは日本がFMSで米国から調達した兵器額が年年膨らみ、最新ステルス戦闘機F35Aの1機当りの調達価格は、米国内向け価格よりも40億円も高くなっていることが明らかになった。また、日本が前払いしながら出荷期限を過ぎても未納入、未精算の装備品が1400億円をこえていた。
機密性の高い高額兵器を売買するFMSは、米国から兵器を調達するさい、兵器製造メーカーではなく米国政府が取引窓口となり、価格や納期は米国政府がメーカーと交渉して決定(見積もりに対して支払い額が高騰する可能性を含む)し、対価は前払いに限られるなど米側にとって有利な契約となっている。支払いから納入まで数年かかることもあり、原価や内訳が非表示であるため価格の妥当性を検証することは難しい。
会計検査院によると、2013年度に1117億円だったFMSによる兵器調達額は、17年には3倍超の3882億円になり、18年度は4101億円、19年度は7012億円余りと、年を追うごとに膨張している。F35Aやオスプレイ、イージス・システム、空中給油機・輸送機、早期警戒機、滞空型無人機(グローバルホーク)などを調達しており、米国にとって2010年度は13位だった日本の取引額は16年からは3位に急浮上した。
日本が147機調達する予定のF35の1機当りの価格については、完成品を調達した12年度の価格が約1・2億㌦(約97・7億円)で、米国が公表している国内向けの価格よりも1270万㌦(約10・3億円)高かった。また日本企業が製造に参画した13年度は、1機当りの価格は約1・5億㌦(約129・6億円)にはね上がり、米国との差は4倍の5619万㌦(約46億円)に拡大。14年度は38・8億円、15年度は47・6億円高い状態が続いていた。
FMSでは、米国政府が提示した見積もり価格に、一般管理費、契約管理費、開発分担金などの負担が上乗せされる。これらの額を決定するのも米国であり、価格の適正性を裏付ける情報は日本側には提供されない。また、韓国や英国など米国からの調達額が多い国は契約管理費の減免が受ける協定を結んでいるが、日本は「自主的に」減免を受けていない。今回も米側は、日本向けと米国向けのF35の価格差について、仕様の差異、開発分担金のほか、日本企業が製造に参画したことによるものと会計検査院に説明したが、具体的な内容は明かしていない。
安倍政府は2012年に「戦闘機を生産・運用する技術の育成」と称してF35製造への日本企業の参画を閣議決定し、三菱重工業に1129億円、IHIに521億円、三菱電機に220億円、合計1870億円を国が負担して施設を整備した。ところが、日本企業に許されたのは主翼や同隊を接合する簡単な組み立て作業だけで、エンジンやレーダーなどの部品製造も、1機当り数万品目ある部品のうち国産はわずか29品目。しかも米国から原材料が届かず、いまだに搭載されていないのが現状だ。膨大な国費を投じたあげく、日本は製造から撤退し、今年度から完成品の調達に切り換えている。
代金支払後も340億円分が未納入
また会計検査院によると、日本側が前払い金を支払ったにもかかわらず、出荷予定時期が過ぎても精算が終わっていない契約が2017年度末時点で653件あり、未精算は総額1400億円にのぼっていた。前払いが原則のFMSでは、納品後に過払い金を返還して精算が完了する。未精算のために返金が滞り、その額が膨張を続けるずさんな実態が明るみに出た。そのうち返金されるはずの34億5000万円は10年以上も放置されていた。
2017年度末時点で日本が前払いした1兆2333億円のうち、精算を終えていない契約は1189件(約8510億円)におよぶ。このうち出荷予定時期を過ぎても兵器自体が納品されていない契約が85件(約340億円)。また納品されても精算が完了していない契約は568件(約1060億円)にのぼっている。