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安岡沖洋上風力 地元で現況説明会とデモ ひびき支店漁師たちに連帯して陸でも行動

 下関市の安岡沖洋上風力発電建設に反対する会(新井萬会長)は5日、経産省のお墨付きを得て準ゼネコン・前田建設工業(東京)が下関に持ち込んできた大規模洋上風力発電の建設を阻止するため、安岡公民館で建設反対住民説明会をおこない、その後デモ行進をおこなった。反対する会のデモ行進は今回が六回目になるが、地元安岡でははじめて。多数の地域住民が参加し、地元の商店や車の中からの応援に応えながら、「企業のもうけのために住民が犠牲になる必要はない!」「前田建設工業は下関から撤退せよ!」「子どもたちに安心して暮らせるふるさとを引き継ごう!」と力強く訴えた。

 

 

 この日は、安岡(横野)沖洋上風力発電建設反対の会が毎月第一土曜日に継続し、先月で丸5年を迎えた街頭活動の日だった。横野町の妙光寺前に集まった地域住民を前に、反対の会の中村淳彦副会長はこの日の行動について、①9時から1時間、国道沿いに立って幟や横断幕で風力反対を訴える街頭活動をおこなう、②午前10時半から安岡公民館で建設反対住民説明会をおこなう、③その後、建設反対デモ行進をおこなう、④午後3時から4時まで街頭活動をおこなう、と提起し、「われわれの強い意志を前田建設に見せつけよう!」と訴えた。

 

 街頭活動の後、反対する会は住民説明会をおこなった。これは住民同士が安岡沖洋上風力の動向をめぐる情報を共有する目的で持たれたものだ。

 

 はじめに新井会長の代行として市議会議員の福田氏が挨拶に立った。福田氏は「私たちの活動はふるさとを守るため、未来を守るためのものだ。前田建設は4000㌔㍗の風車を15基つくる計画から、5000㌔㍗の風車を12基つくる計画に変更しようとしているが、さらに巨大なものになれば低周波の健康被害も大きくなるし、高さも180㍍をこえる。前田建設は風車が建てば、洋上風力1㌔㍗時当り38円が20年間保障される。福島原発事故のあと、再生可能エネルギーを増やすために固定価格買取制度ができたからで、その原資として各家庭から電気料金の10・3%が再エネ賦課金としてとられている。前田建設は、われわれが疲れて、どうせつくられるだろうとあきらめて、運動をやめてしまうのを待っているがそうはいかない。安岡は今若い世代が増えており、若い世代を守るためにこれからもしっかり頑張っていこう」とのべた。

 

 続いて、漁業者の工事差し止め裁判の弁護団を代表して道山弁護士が報告に立った。風車建設海域に共同漁業権を持つ山口県漁協ひびき支店の漁業者たちは、その海域には日本でも有数の岩場の瀬があり、海藻が生え稚魚が育ち、サザエやアワビ、ウニをとるアマ漁やタコツボ漁、建網漁をおこなっており、そこに風車1基につき数十㍍を掘削してコンクリートで基礎をつくれば漁場は破壊され、生活の糧が奪われると訴えている。

 

 道山氏は、裁判では前田建設工業が環境アセスに基づいて「海への影響はない」と主張し、裁判所がこれを認めて一審、二審は敗訴となったが、現在最高裁に上告して書面審査に入っているとのべた。また、ひびき支店が風力反対とボーリング調査反対の総会決議を上げ、抗議文を送りつけているにもかかわらず、前田建設工業がそれを無視してボーリング調査を始めているとのべるとともに、「山口県漁協の彦島支店運営委員長の廣田氏が“風力に賛成すれば補償金を上乗せする”といって一部の漁師を買収しようとしたが、ひびき支店がこの動きを一蹴した」と報告した。

 

 司会も「“漁師は寝返った”という噂が流されているが、ひびき支店は一致団結して風力反対を貫いている。数人の漁師が賛成に動いたとしても、支店の総会で3分の2の同意がなければ漁業補償交渉は成立しない。陸と海とが団結して頑張ろう」と付け加えた。

 

会場で発言を聞く住民たち

 

 その後、会場からの質疑に移った。

 

 元自治会役員の男性は「みんなで反対運動を始めて今日に至るまで6年がたった。前田建設が住民を訴えた損害賠償請求訴訟も、漁師さんの工事差し止め訴訟も負け続けている。われわれはなにを信じて、どういう方向で進んでいけばいいのか? ここにおられるみなさんで毎月毎月頑張ってきている。これからの長期戦、3年、5年先を見据えて、次に打つ手はなにかをしっかりと考えていきたい」との率直な意見をぶつけた。

 

 道山弁護士は、今後前田建設工業が環境アセス評価書を出し、県が公有水面使用許可を出したら、県と国を相手取った行政訴訟を開始する準備をしているとのべた。

 

 まちづくり協議会の男性は「風力発電の健康被害は命の問題だ。和歌山県の由良町議会議員の由良守生氏が昨年、北海道大学であった土木学会全国大会の学術講演会で講演し、由良町では尾根に立つ風車21基からの低周波音によって、頭痛や吐き気、耳鳴り、不眠などの健康被害が町民の18・89%にあらわれ、苦しさやストレスによる脳溢血や心筋梗塞、ガンなどで死者も出ていると報告している。わかっているだけで、低周波音による死者は全国で20人以上、愛媛県で10人、由良町では7人いるという。それを新聞が書かないのは、出すと広告料が出ないからだそうだ。安岡小学校に通う子どもが健康被害になることを想像してもらいたい。由良町では亡くなった方が最期に“風力はできてしまったら終わりだ”といっていた」と訴えるとともに、「われわれがこれからやることは、こういう事実をもっと多くの人に知ってもらって、真剣な反対の声を大きくして、大きな反対運動にして長く続けていくことだ。それが勝つことにつながる。反対運動で頓挫した風力計画も全国にはたくさんある」と発言した。会場から大きな拍手が送られた。

 

 司会からも「綾羅木、安岡、吉見、吉母地区は風車の風下になって健康被害の恐れのある公害地域だ。みなさんと一緒になって力を発揮することが大事。住民が本当に団結すれば絶対に勝てるんだという意欲を持って、意志を貫いていこう」と意見が出された。

 

 その後のデモ行進は、沿道の大きな支持と注目のもとにおこなわれた。デモ行進の出発に間に合うように来た人たちも合流して、安岡公民館を出発して国道を前進し、マルショク前を折り返して北バイパス出口付近で折り返して公民館に戻るコースを、たくさんの風力反対の横断幕や幟を掲げて行進した。

 

 参加者は口口に「安岡の地元でやる初めてのデモ行進だったが、こういう集会とデモはたびたびやるといい」「風車はもうできるのではないかという不安が流れているなかで、住民は変わらず反対しているということを知ってもらいたい」「他の地区の人たちの参加も広げていきたい」「安岡の住民は静かにしていても、黙っているわけじゃないんだということを見せつけることができた」と語った。

 

 安岡本町の女性は「“民意”という抽象的な言葉で終わるのではなく、今後は風力反対署名13万筆に挑戦したらどうかと思う。下関市の人口が26万人なら半数だ。市外の人がいるにしても、すべて下関市民が集めた署名だ。反対する会が呼びかけて、一人一人が2枚・20人分を頑張ったらいい。住民のみんなが動いている、ますます反対運動が意気盛んになっているということを形にしたい」と語っていた。

 

 首相お膝元に経産省お墨付きで持ち込まれた安岡沖洋上風力発電計画という国策に対して、この6年間、住民たちは1000人規模のデモ3回を含めてデモ行進を6回おこない、10万筆の反対署名を集め、毎月一回の街頭活動を5年間継続してきた。また、安岡自治連合会(5300世帯)をはじめ山口県漁協ひびき支店、下関医師会北浦班、山口県宅建協会下関支部など20団体が反対の意志を表明して市長に反対表明を求める陳情をおこなってきた。住民たちは今回のデモ行進を契機に、ますます行動意欲を高めている。

 

デモ行進を終えて拍手で成果を確認

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