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南シナ海で「いずも」中心の演習くり返す 米国防護の態勢に拍車

 米トランプ大統領が「日米安保条約は不公平だ」と安倍政府の尻を叩きながら、自衛隊を米軍防護の最前線に立たせる準備が加速している。4月末からヘリ搭載護衛艦「いずも」に、水陸機動団員(日本版海兵隊)を乗せ、南シナ海近辺で軍事侵攻作戦の訓練を執拗に継続してきた。米国は関税問題やファーウェイ問題で勝ち目がないため中国や北朝鮮との交渉を進めているが、日本の自衛隊については米軍指揮下の最前線部隊に仕立てあげる動きを強めている。

 

 「空母化」が決定した「いずも」は、4月30日に水陸機動団員30人を乗せ横須賀基地を出港した。7月初旬までの2カ月間、インド太平洋地域も含む広い海域で軍事演習をおこなうためである。

 

 しかし海上自衛隊の大型艦に陸上自衛隊の戦闘員を乗せて長期航行するのは初であり、自前の空母仕様艦船に地上戦専門の戦闘要員を乗せて長期間軍事作戦を展開するのは前例がないことである。

 

 ここ2カ月間の「いずも」や南シナ海近辺をめぐる主な動きは次のとおり。

 

▼5月3~9日……米軍第七艦隊、インド海軍、フィリピン海軍とともに初となる4カ国共同軍事演習を実施(訓練海域は九州西方から南シナ海)。「いずも」や海自護衛艦を中心にして米海軍の駆逐艦やインド海軍の駆逐艦が作戦を支える布陣だった。

 

▼5月6日……米軍艦船が南沙諸島周辺を航行する「航行の自由作戦」を実施。

 

▼5月19~22日……インド洋で初となる日米仏豪4カ国軍合同での軍事演習を実施し、米海軍のミサイル駆逐艦10隻、仏軍の原子力空母「シャルル・ド・ゴール」、オーストラリア軍の潜水艦が参加。スマトラ島西方の公海で対潜水艦訓練や搭載ヘリの共同運用訓練を実施。「いずも」の甲板には米・仏・豪軍の司令官がヘリで集結した。

 

▼5月23~24日……インド洋で日印共同訓練を実施。「いずも」がインド海軍とともに対潜水艦対処の共同軍事演習をおこなった。

 

▼5月29日……マレーシア沖で日マレーシア共同訓練を実施。

 

▼6月10~12日、19~20日……南シナ海で日米共同訓練を実施。米軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」が参加し、同空母に搭載されている特殊作戦用ヘリ「ブラックホーク」が「いずも」に着艦する訓練などをおこなった。

 

▼6月13~15日……南シナ海で日カナダ共同訓練を実施。カナダ海軍の補給艦と「いずも」がともに対潜戦訓練、模擬洋上給油訓練などをおこなった。

 

▼6月17日……南シナ海で日ベトナム共同訓練実施。

 

▼6月18日……カナダ海軍の艦艇2隻が台湾沖を航行。

 

▼6月26日……南シナ海のブルネイ沖で海自と海上保安庁が初の共同訓練を実施。「いずも」と海保巡視船が参加した。

 

▼6月28日……フィリピン沖で捜索・救難を中心にした日比共同訓練を実施。

 

 こうして南シナ海周辺で何度も「いずも」を中心にした軍事作戦をくり返し、事実上、空母の運用を先どりする訓練が始まっている。

 

 自衛隊はもともと空母の保有を禁じていた。空母は戦闘機を積んで海外侵出するための兵器であり、攻撃専門の軍艦だからである。だが昨年12月に「空母ではない。多用途運用護衛艦なのだ」と主張し「19年度防衛計画の大綱」で空母保有を公然と認めた。その延長線上でアジア海域で、自衛隊に米軍の空母艦隊を肩代わりさせる準備が進行している。米国が進めているのは、日本を対中国、対ロシアを想定した米本土防衛の防波堤にしていく軍事配置にほかならない。

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