「むつみ演習場へのイージス・アショア配備に反対する阿武町民の会」(吉岡勝会長)の役員8人が17日、花田憲彦町長と末若憲二議長を訪れ、町民の会会員が1394人(有権者の約48%)に達したことを報告し「イージス・アショアに反対する町民の反対の意志を国に対してしっかり伝えていただきたい」との要請書を提出した。
要請書は、「2月3日に福賀地区で設立した町民の会は、その輪を奈古地区、宇田郷地区に広げるために会の役員や会員が中心となって広げ、イージス・アショアが設置された場合の風評被害や、レーダー照射による人体影響への懸念、飲料水等の枯渇に対する懸念、ブースター落下やミサイルの飛来による危険度の増加、それに伴う若者等の移住、定住に係るUターン者、Iターン者の確保も難しくなり、一生懸命に担ってきた町づくりに反するものであることについて協議を重ねてきた」と経過を報告。その結果、奈古、宇田郷の住民の理解も深まり、17日現在で奈古地区758人、福賀地区381人、宇田郷地区255人の合わせて1394人(有権者2989人の約48・1%)の会員へと膨れ上がったことを明らかにした。そして、これまで阿武町では農事組合法人の設立など、先人の意思を引き継ぎ、農業を中心とする第一次産業の振興を推進し、豊かな自然環境を守ってきた、私たちは素晴らしいこの町の産業や環境を次世代につなげていかなければならないとのべ、国に対して配備撤回を求める町民の意志を伝えてほしいと要望している。
花田町長は、「町民みなさんの力でつくった会が、1394人という素晴らしい数字となった。このような草の根のような動きは、阿武町始まって以来のことだと思う。通常の署名とは違い、意志を持って多くの町民が会員になったと考えており非常に重く受け止めている」とのべ、近いうちに国に要望する意向であることを明らかにした。昨年9月20日に町議会が反対の請願を採択し、町長として反対を表明したが、「その行動が間違っていなかったと今日改めて感じている。町民の会をこれからも広げていってほしい」と激励した。
この問題をめぐり、「阿武町への国の交付金が削られるのではないか」「山陰道の進行が遅れるのでは」等の根も葉もない話が流布しているが、その懸念は当たらず、今年度も国に要求した地方創生の交付金が採択され3年間で3億3000万円が下りることになったと説明し、「国がやることだから」と諦めを誘うような空気もあるなかで、確信をもって会員となった町民が半数にのぼった事実を重く受け止めたいとのべた。
吉岡会長は、「私は奈古の先輩や友人にお願いして会員を集めてもらった。人から人へと広がっていき、これほど集まるとは思わなかった。できれば国が調査結果を発表する前にぜひ町民の意志を伝えてほしい」と語った。また今後、町民の会を広げていくとともに、奈古・宇田地区にも役員を募り、各地区で集いなどを開くことも役員会のなかでは論議になっていると明らかにした。
花田町長はその後のインタビューで「住民の理解が大前提という国の方針から見ても、これほどの反対があることを踏まえれば“適地”ではないといえると思う。それを国に伝えていきたい」とのべた。
参加した福賀の女性役員たちは、「町長さんの喜びが私たちの喜び。本当に町民の会になったという感じがする」「町長の気持ちを聞いて、なにがあっても諦めてはいけないと思った。会員はまだまだ増える可能性がある。今からも回りたい」と今後の行動への意欲を語っていた。