下関市は18日、下関市立大学の新理事長に下関市の元副市長だった山村重彰氏が就任すると発表した。任命権者は前田晋太郎市長。山村氏は江島潔市長の時代に若くして役所内で出世し、職員トップの座に駆け上がっていった人物として知られる。安倍派の江島元市長から林派の中尾友昭前市長にかわった際、年齢としては定年前だったが特別職の座を降り、表舞台から姿を消していた。理事長ポストは年収1400万円、任期は4年で退職金も支給される。今回の配置について、市役所や地元政財界関係者たちのあいだでは、江島体制の復権や安倍派功労者としてのゾンビ復活を感じ取っている人が少なくない。
下関市立大学の理事長ポスト(年収1400万円)や事務局長ポスト(同1200万円)は、独立行政法人化を契機に市役所幹部職員が定年後に天下るポストと化してきた。歴代の理事長のなかで、現職の荻野氏を除くとみな元幹部職員であり、安倍派の市長や林派の市長とつながりが深い人物が定年後も高額報酬を与えられてきた。学長が理事長を兼務する大学も多いなか、あくまでこの棲み分けに固執するのは、任命権者である市長や背後の政治勢力にとって、年収1400万円のイスは味方を養ったり、取り込んで引きつける際の道具になるからにほかならない。
市幹部職員のなかでは、水道局長、副市長、市大事務局長、市大理事長、市民病院事務局長、文化振興財団理事長、美術館長、市監査委員長などの「上がり」のポストが幾つかあり、この分け前にありつけるのは幹部職員のなかでも一部に限られる。任期の都合で目詰まりを起こした場合は、退職者が嘱託職員として再任用され寄せ集められる場所でも特別室をあてがわれ、1、2年待機した後に渡りを付けていくこともある。山村氏の場合、出世が早かった分公務員人生は短く、江島元市長の退場とともに居場所を失っていた。この再配置が動いたと見られている。なお、今後は海響館を運営する下関海洋科学アカデミーの理事長ポストについても「前田カラー」を押し出した配置が動くともっぱらの噂になっている。
下関市立大学を巡っては、昨年末から学長選考の決着がつかず内部でもめていた。最終的には意向投票で10対40で大惨敗した現職の川波洋一氏が選考会議(経営側3人、教員代表3人)で敗者復活を遂げ、続投が決まった。抵抗していたと見られる選考委員の1人(教授)が多数決の際にみずから退席し、3対2で決着するという不可解なものだった。市幹部職員や政治家界隈の私物化や政治利用を排除し、大学を大学としてまともに運営せよと求める教員の声は以前から根強いが、肝心要の正念場で一部が折れていく弱さも露呈した。
山村&砂原体制についてあからさまな江島体制の復権と見る向きもあるなかで、今後の市立大学で何が始まるのか、注目されている。トイレ改修工事損害賠償事件を起こした当事者の仲良したちが、再び決裁権を握ったことを意味しているからである。