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3・8国際婦人デー 世界60カ国以上でデモやスト

 3月8日の国際婦人デーの日、世界の60カ国以上でストライキやデモがとりくまれた。近年、女性の社会進出、職場進出はめざましく、先進国のみならず発展途上国においても労働力人口の約半分を女性が占めており、世界的には家事や育児も含めると「天の半分以上を女性が支える」時代となっている。だが、どの国でも、同じ仕事をしていても女性の賃金は男性より低い。また、家事・育児や介護はかわりなく無償の労働として個別の家庭に任され、おもに女性の肩にかかっている。国際婦人デーのメインスローガンは「私たちが止まれば世界も止まる」だ。大規模な社会進出をはたした女性がみずからの持つ力に目覚め、非正規で不安定な低賃金労働や家事・育児を女性に押しつける制度の問題を社会的に提起し、「男女の平等」「婦人の解放」を実現するために、男性と肩を並べて社会を変えていく展望をストライキによって示す運動となっている。この運動は年年国際的な連携を広げ、新生の運動として勢いを増して発展している。

 

スペインのサンタンデールでのデモ行進

 国際婦人デーをストライキでたたかおうというとりくみは、2017年のアルゼンチンでの成功を受けて世界に広がっている。今年はスペイン、イタリア、アルゼンチンで主要な労組が全国ストをたたかい、ベルギーとギリシャが新たにストに加わった。

 

 昨年、530万人がストライキに参加したスペインでは、今年はそれを大きく上回る600万人がストライキに参加した。二大労組センターである労働者総同盟と労働者委員会は2時間の時限ストを実施し、多くの独立労組が24時間ストをたたかった。各地の職場では女性と男性が腕を組んでストに入った。学生組合は「教室をカラにする」を呼びかけた。

 

 この3・8ストについて「スペイン社会の変化を求める明確な表現だ。もうこの声を無視し続けることはできない」との声が上がっている。

 

 スペインでは国際婦人デー史上で初の全国規模の女性ストライキを昨年おこない、今年で2回目となった。ストライキの発起人は「私たちは社会に対して性差別的抑圧、搾取、暴力をやめることを要求する。女性に従順と服従、そして口を閉ざしていることを求める男性優位社会と資本主義の同盟に抗い、たたかおうと声を上げる。職場で不利な条件を与えられることを、同じ仕事をする男性との賃金格差を私たちは許さない。仕事を停止するストライキを呼びかける」と表明している。

 

 集会やデモはスペイン各地の1500カ所以上でとりくまれ、首都マドリードでは昨年の倍以上の37万人余りが参加した。バルセロナでは「私たちはすべてを変えるために止めた」というスローガンのもと20万人が参加した。セビリアでは13万人が参加し「婦人の解放がなければ革命は起こらない」の横断幕が掲げられた。ヒホンで10万人、マラガで6万人など各地の中心街は街頭にくり出した人人に埋めつくされた。

 

 ちなみにEUの調査では、スペインの女性労働者は男性と同じ内容の仕事をしても、公共部門で約13%、民間部門で約19%も賃金が低い。また、労働組合の調査では、短期雇用契約を結んでいる労働者の約7割は女性だ。

 

 スペインの隣国ポルトガルの首都リスボンでは、医療破壊とたたかっている看護師組合が白衣を着用した「白い行進」と名付けたデモ行進をおこない、1万人が参加した。

 

 スペインのようにとりくみを進めてきたドイツでも各地でデモ行進がおこなわれた。ベルリンでは約4000人が集まり、運動の発展を誓った。

 

 ドイツでは今年の1月19日が初めて女性が選挙に参加してから100年目にあたる。ベルリン市では今年から3月8日の国際婦人デーを祝日に制定するなど、女性の権利について考え、男女平等を実現しようという世論が高まっている。

 

 ドイツ政府の2017年の報告では、子育て中の働く女性は男性よりも毎日平均87分も家事・育児・介護に多く時間を費やしている。そうした無償の仕事を通算すると10億ユーロの生産価値があり、製造業全体よりも多い数値になるとの分析もある。女性の賃金は男性より21・5%低い。

 

 イタリアでは三大労組が昨年に続いて全国ストを呼びかけ、公共部門、民間部門でストがたたかわれた。ローマやナポリなどの主要都市でバスや地下鉄の運行が最低限となった。デモ行進はローマをはじめミラノ、トリノ、ナポリなど約40都市でとりくまれた。

 

 昨年末からマクロン政府の新自由主義改革に反対する「黄色いベスト」運動が発展しているフランスでは、パリなどで男女の賃金格差に象徴される差別に抗議するデモで、「不平等なシステムをひっくり返そう」の横断幕を掲げた。フランスでは女性の賃金は男性の約4分の3にとどまる。労働組合は「就業時間も4分の3でいいはずだ」として、定時より早い午後3時半からデモに加わるよう呼びかけた。

 

 ベルギーの首都ブリュッセルでは1万5000人、ノルウェーの首都オスロでは1万4000人がデモ行進した。

 

ラテンアメリカ 新自由主義政策と対決

 

 南米のアルゼンチンではIMF(国際通貨基金)と親米マクリ政府の新自由主義、緊縮財政政策に反対するストライキ闘争やデモ行進が毎日のようにおこなわれている。6日からは教員組合が72時間スト、7日からは600以上の公立病院の医師らが48時間ストに入った。このまっただなかで国際婦人デーでは主要な労組がストに入った。労働組合は女性団体との連携を求めている。首都ブエノスアイレスのデモ行進には数十万人が参加した。このデモ行進のなかには大量レイオフの攻撃とたたかっているコカ・コーラの女性委員会の労働者もいた。スト中の教員や医師らもデモに参加した。

 

 アルゼンチンの隣国チリでは70余りの都市でデモや集会がおこなわれ、チリの人民運動全体を一つに結びつけ、より多くの行動を起こしていくための出発点にしようと呼びかけた。首都サンティアゴでのデモ行進にはかつてない規模の40万人以上が参加し、歴史的な日になった。

 

コカ・コーラのレイオフ攻撃とたたかうデモ(アルゼンチン)

 参加者は女性への差別・抑圧、暴力について資本主義との関係で暴露した。労働者は、労働力柔軟化やさまざまな非正規職拡大など、労働条件を悪化させ、賃金引き下げをもたらす新自由主義を批判した。

 

 またピノチェト軍政時代の抑圧で殺された人たちの遺族は、その遺影を掲げ、同じようなことを二度とくり返させてはならないと訴えた。

 

 ブラジルでの国際婦人デーも、政府の新自由主義推進との対決が中心課題となり、少なくとも22都市でデモ行進がおこなわれた。

 

 中米でも各国でデモ行進がとりくまれた。メキシコの首都メキシコシティーでは、首都自治大学の独立連合や労組、女性団体など20以上の団体がデモ行進をとりくみ、1万人以上が参加した。デモにはあとをたたない女性の失踪、殺害の犠牲者の遺族らも参加した。デモのなかでは家父長制の暴力と雇用の不安などに抗議し、「私たちの抵抗を奪うことはできない」「私たちはお姫様ではなく、戦士だ」のスローガンを叫んだ。

 

 アメリカでも各地で集会やデモがとりくまれた。ニューヨークではマンハッタン公園で働く女性に連帯を呼びかける集会が開かれた。このなかではトランプ政府が排斥を強める移民との連帯も訴えられた。

 

 クリーブランドでは市役所前で集会を開いた。女子青年は「私たちが女性として苦しんできたすべての苦難を通して、世界中の女性と連帯する感動的な運動だ。私はその一部になるために行動している」と語った。

 

 ピッツバーグでは労働者のたたかいの色である赤の帽子やスカーフ、コートで参加する人が多かった。集会には国際婦人デーの起源が、社会主義のたたかいと不可分であったことが強調された。

 

 オークランドでは9日に集会が開かれた。ここには世界各国からアメリカに来て働いている人たちなどが参加し、集会の発言は英語、スペイン語、タガログ語でおこなわれ、大洋と国境をこえた団結が強調された。フィリピンやベネズエラの情勢を巡り、アメリカ批判の発言があいついだ。

 

 韓国のソウルでは8日午後、プレスセンター前で民主労総が「国際婦人デー精神継承全国労働者大会」を開いた。大会のなかでは職場での女性労働者への差別・抑圧が語られ、すべての雇用過程での性差別粉砕、最低賃金の引き上げ、正規職転換の獲得、性差別の格差賃金の解消などを決議した。また韓国の女性団体、労組、政党などで構成する「3時ストップ共同行動」は、男女の賃金格差が100対64であることに抗議し、午後3時まで分しか賃金を受けとっていないという「3時ストップ早期退勤デモ」をおこなった。

 

ソウルでの集会

 フィリピンでは首都マニラで女性団体のガブリエラが中心となったデモ行進がおこなわれ、約5000人が参加した。親米ドゥテルテ政府の強権的な支配、ミンダナオでの戒厳令に反対し、くり返される性差別を糾弾した。

 

 トルコの最大都市イスタンブールでは数千人が女性の権利向上を求め、女性への暴力を非難してデモ行進した。エルドアン政府はデモ行進を認めず、デモ開始前から市の中心部に警官隊を多数出動して非常線を張り、デモ参加者に催涙ガスを発射し、警察犬を使って威嚇した。デモ隊は「私たちは抵抗することで強くなる」と書いたプラカードを掲げ、「性差別反対、暴力反対」を訴えた。

 

 オーストラリアでも各地でデモ行進がとりくまれた。シドニーでは1500人が参加し、「立ち上がって反撃」のスローガンを叫び、男女差別の撤廃、平等の賃金、女性への暴力に反対し、世界各国の女性との連携を訴えた。

 

メルボルンでの婦人たちのデモ

 ちなみに日本の労働力人口に占める女性の割合は42%で、世界的な趨勢と同様だ。男女の賃金格差は100対66で、先進国のなかで最下位となっている。また、女性就労者の55・8%は非正規だ。男性では21・3%が非正規となっており、職場における男女差別は他の先進国と比べて大きい。

 

 国際婦人デーは第一次世界大戦前夜の1911年に始まった。ドイツの婦人活動家クララ・ツェトキンが、1908年にニューヨークの縫製工場で働く婦人たちが「パンと参政権を!」と立ち上がった日を婦人の日とすることを提唱し、世界の婦人が団結して戦争に反対し婦人の地位向上のためにたたかうことを呼びかけた。

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