ついに国会で、日本は米国の51番目の州になったらどうかといい出す者が出てきた。植民地支配の構造について「まるで米国の51番目の州のようだ」と批判的な意味合いで使う人はこれまでもいたが、そうではなく完全に一体化してしまえば集団的自衛権も安保も問題なくなるし良いではないかというのである。「独立」の体裁をやめてしまえば、煩わしい国会審議も法改正などの面倒臭い手続きもなくなって、アメリカの「日本州」としてスッキリするではないかという意味合いのものだ。
丸山の考えでいくと、アメリカの戦争に日本の若者が駆り出されるのではなく、アメリカ人として参加することになり、米軍と自衛隊の一体化も指揮系統の問題を飛び越えて自衛隊が米軍そのものになる。TPPなどの「外交交渉」も必要なく、無関税で市場も一体化する。社会制度や法律についても障壁やISDS条項など関係なく、丸ごと米国ルールになることを意味する。天皇家をどう処遇するのかは疑問だが、「米国になれば万事解決ではないか」といっているようなものだ。あまりに開けっぴろげすぎて、安倍自民党は良くも悪くもバカ正直というか、売国奴の性根を隠すことすらしないようになったのだと感じた。
目下、丸山が「黒人の血を引く奴隷」が大統領になるような素晴らしい国だと賞賛したのがやり玉に挙がり、実はオバマの父親はケニア出身で奴隷ではないとか、黒人=奴隷と見なす人種差別発言として波紋を広げている。宗主国の大統領様に何と失礼なことをいうのかという雰囲気で、野党が問題にしているのも人種差別という点だけである。しかしより問題なのは、人種差別とか丸山の勉強不足以上に、自主憲法制定を叫んで改憲をもくろんでいるはずの自民党・憲法審査会幹事の口から、「51番目の州になったら」という言葉が出てきたことだ。独立国の立場を投げ出そうという側が、自主憲法なのだと欺瞞して戦争放棄とか国民主権を忌み嫌い、「改憲」をやろうというのである。これはいったい、なんという矛盾だろうか。
米国大統領選では、まさに金融資本主義への批判世論が吹き荒れ、今の米国社会に展望などないのだと全米が呼応して旋風を巻き起こしている。そのなかで、時代遅れの認識のまま、属国のシーラカンスたちが夢見心地で米国崇拝をやっている。アメリカ人になりたい国会議員はみな辞職して、渡米したまま二度と帰って来なくて良いと思う。
武蔵坊五郎