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富裕層26人が下位38億人分の資産を独占 NGO・オックスファムが報告書を発表

 英国を拠点に貧困問題にとりくむ国際NGO「オックスファム・インターナショナル」は21日、世界の富裕層上位26人が、世界の人口の約半数に及ぶ所得が低い38億人と同じ額の資産を独占しているとの報告書を発表した。世界的な貧富の格差は、「富裕層上位43人の資産=下位半数の資産」だった昨年の推計からさらに広がっており、同団体は格差是正のために富裕層への課税強化が必須であると各国政府に訴えている。

 

オックスファム・インターナショナル

 同団体が、スイス金融大手のクレディ・スイスのデータなどをもとにして推計したところ、経済的に貧困な世界人口の下位半分の資産合計は1兆3700億㌦(約150兆円)で、米経済誌「フォーブス」の長者番付と照合した結果、上位26人の資産合計とほぼ同じだった。

 

 世界人口の下位半分に及ぶ38億人の資産合計が対前年比で11%減ったのに対し、超富裕層1900人の資産合計は2018年3月までの1年間で12%増えていた。全世界の人人が緊縮策と増税、物価高に苦しむ一方、その資産が富裕層の手に渡り、10億㌦(約1100億円)以上の資産を持つ富裕層が世界各地に保有する資産総額は毎日25億㌦(約2700億円)ずつ増加し、リーマン・ショック直後(09年)の2兆8330億㌦(約312兆円)から9兆600億㌦(約997兆円)に膨れ上がった。

 

 世界一の富豪である米アマゾン・ドットコムの創業者ジェフ・ベソスの資産は昨年、1120億㌦(約12兆2800億円)に増えた。オックスファムは、ベゾスの総資産のわずか1%が、人口1億500万人のエチオピアの保健医療予算全額に匹敵すると訴えている。

 

 リーマン・ショックによる世界金融危機によって富裕層への減税が実施され、富裕層の資産や大企業の内部留保は減るどころか増え続けた。報告書は、「先進国における個人所得税の最高税率は、1970年の62%から2013年には38%に低下した」とし、ブラジルやイギリスなど一部の西側諸国では、最も貧しい10%の人人の方が最も裕福な10%よりも高い個人所得税を払っており、世界の最富裕層が約7・6兆㌦(約836兆円)の租税を回避しているために、途上国は年間約1700億㌦(約18兆7000億円)の所得を失っていると指摘している。

 

 これらの要因は、資本の集中を基本として、グローバル企業による租税回避(タックス・ヘイブン)、富裕層への優遇税制、企業誘致のための法人税の過剰な引き下げ、医療や教育など福祉予算の削減などの新自由主義的政策によるもので、社会運営にとって不可欠な公共機関まで民営化されて資金不足に陥り、多くの国で教育や質の高い医療は富裕層のみに与えられる「贅沢」となった。富める者がますます富むなかで、大多数の貧困化が蔓延して搾取の対象がなくなると、公共サービスや社会資本までもうけの具として市場競争のなかに引きずり込み、生産力そのものを破壊するという資本主義の矛盾が極限にまで来ていることを示している。

 

 日本の貧困率は15・6%(2015年)で、一人親世帯の貧困率は50・8%となっており、先進国のなかでは最悪レベルとなっている。マクロン政府を追い詰めるフランスや、EUからの離脱を求める英国をはじめ世界各地で、グローバリゼーションに対抗して「収奪者から収奪せよ」の世論と行動が強まるなかで、1%が独占した富を再分配し、その私的独占のために荒廃した社会全体を立て直す99%の要求は世界的に強まっている。

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