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統計までも虚飾だったという驚き

 毎月勤労統計を巡って、厚労省が統計不正に手を染めていた事実が発覚している。賃金水準を過小推計したために、長年にわたって雇用保険や労災保険の定基準が狂って給付額が少なくなり、政府が本来支給するべきだった社会保障額が抑えられていたというものだ。影響を被った人数は1973万人、金額にして567億円におよぶという。またそれだけでなく、データを補正するために必要とする基礎資料のうち、04年~11年分を紛失したり廃棄していたことも明らかになった。統計の根幹を揺るがす事態であり、財務省の公文書改ざんにも匹敵するほど唖然とする話である。

 

 役所などでは「毎勤統計」と呼ばれ、この統計に示された数値に基づいて前述のような労働保険や雇用保険を算定したり、景気分析などをおこなっている。その地方調査を担っているのは全国の地方自治体で、統計情報を専門にした担当部局が日夜奮闘して数字を積み上げていく。国全体を把握することもさることながら、それぞれの地域がどのような賃金や就労実態になっているのかを見る上で、極めて重要な記録でもある。

 

 そうした記録をたどって、例えば研究者が山口県や下関地域に絞って、各種産業の就労人口の変化や、大手製造業従事者の割合、中小零細企業の就労者数や事業所数、それらの賃金動向といった歴史的変遷を振り返りたい場合に、過去から現在までの毎勤統計に分析を加えることで見えてくるものがある。中小零細企業や商店が淘汰されて、大手製造業に働き手が吸収されているとか、あるいは逆に大手製造業が撤退して地域全体の就業人口が減った、つまり労働力人口の流出を招いたというようなことも、これらの蓄積を丹念に分析することでしか、説得力を持った解説にはならないのである。

 

 社会を映し出す統計数値が正確さを欠き、あるいは紛失し、過去をあるがままに振り返ることができない、現在を捉えることができないというのは、先進国としてあるまじき事態といえる。苦労の賜である統計の継続性にもヒビが入り、信頼できる基礎資料としての体を為していないのである。

 

 日本社会及び地域社会の実態把握に対していい加減である--。これは行政なり政治が誰を見て、誰のために仕事をしているのかを端的にあらわしている。この間、政府は「アベノミクスで労働者の賃金が向上した」などとうそぶいてきたが、裏付けとなる統計そのものへの信頼が揺らいでいる。現実から遊離していく虚言癖は大概にしなければならない。また、公文書改ざんの財務省にせよ、これが地方自治体なら関係職員は処罰されるような事態を引き起こしながら、霞ヶ関では誰一人処分されない構造についても目を向けたい。 武蔵坊五郎

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