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米ロサンゼルスで公立校教師3万人がストライキ 公教育を守れ!

 米ロサンゼルス市で14日、学校民営化路線のなかでの公教育への予算や人員削減などに反対して3万3000人をこえる公立学校の教師たちがストライキに突入した。昨年から各地で頻発している教員のストライキが全米に波及し、全米で2番目に学区規模の大きいロサンゼルス市では30年ぶりの過去最大のストライキとなっている。教員だけでなく、学生や保護者、また医療や福祉などの公共サービスにかかわる労働者たちも加わり、公教育を守るための行動が大規模化している。

 

デモに参加した教師たち(14日、ロサンゼルス)

 日本を含む主要なメディアは、ストの要求を教員の賃金問題だけに矮小化しているが、ストを主導するロサンゼルス統一教員組合(UTLA)は、民営化によって不足する学校資金の拡充、大規模化したクラスの縮小、サポートスタッフの増員など、民営化路線のなかで荒廃した公立学校の環境改善を求めてきた。教育委員会当局と約17カ月に及ぶ協約交渉を続けてきたが、当局は資金がないことを理由に不誠実な回答を続け、昨年7月に交渉は決裂した。そのためUTLAは全組合員(約3万3000人)の98%の賛成でストライキの実施を決定した。

 

 UTLAの組合代表は「カリフォルニアは全米で最も豊かな州であり、最も青い(民主党支持者が多い)州だ。そしてロサンゼルスには全国のどの地域よりも多くの富豪が住んでいる。にもかかわらず公立学校の児童・生徒には必要最低限の予算も与えられず、億万長者や大企業が公立学校から資金を奪っている。それを手助けしているのがカリフォルニアの政治家たちだ」「当局が目指しているのは、公立学校への資金をうち切って公教育を解体し、完全に民営化することだ。これは公教育を守るためのストライキだ」と訴えている。

 

 最後までスト延期のために組合権限の無期限差し止めなどの法的手段に出ていた当局は、ストを実行した場合は、非組合員の代替教師の雇用や、オンライン指導を導入したり、親のボランティアを連れてくることによって学校を通常通り動かすことを宣言していたが、組合側は積極的に親と学生、市民たちに支持を訴えて、スト実施中に給食を食べられない生徒たちのために食料を確保する協力が広がるなど、組合の枠をこえた社会的な運動となっている。

 

 ストは約64万人の生徒らが通う小中学校や高校に及んでいるが、生徒や保護者らも「教師たちとともに立ち上がる」「生徒のためにたたかう」と書かれた横断幕やプラカードを掲げて教員たちの抗議デモに参加している。また保健医療従事者などの教育・福祉にかかわる労働者やチャータースクールの教員たちも合流している。公教育破壊にまで進んだ新自由主義改革に対抗する広範な人人の行動意欲を結集している。

 

全米各地の闘争に波及

 

 ロサンゼルスに限らず全米の公立学校は、政府や金融資本が進める新自由主義改革のなかで民営化の荒波に呑み込まれてきた。

 

 公費の補助を受けながら民間が経営するチャータースクールが増加する一方で、公立学校の資金は削減され、学校が廃校になると企業や富豪が土地を安く買い上げて学校事業を始めるという手法が横行した。

 

 全米で最も多い280のチャータースクールがあるロサンゼルス統一学区では、不動産企業家やウォルマートなどが都市開発利権とあわせて学校ビジネスに乗り出し、これまでの規制を撤廃して学区の50%(現在の2倍)の学校を民営化する計画を当局に提示している。

 

 民間資金を導入し、教育を非専門職化して未経験の教師を採用する「ロサンゼルス方式」を全国的な民営化モデルにすることを公言しており、教師たちのたたかいはこの流れに対する国民的な思いを代表したものになっている。

 

 カリフォルニア州では、リーマン・ショック後の09年には8000人の公立学校の教師たちが解雇され、学校の施設修繕費がないため水道管が破れたまま放置されたり、天井が落ちてくるなどの荒廃が急速に進んだ。ネズミやゴキブリが徘徊し、クラスの人数も1クラス30人未満だったものから60人以上が教室に詰め込まれ、椅子や机もないため床に座って授業を受ける状態となったといわれている。

 

 教師の給与も削減され、フードスタンプ(食料配給)に頼る生活レベルに落ち込むなか、生徒たちもまた貧困化のなかでホームレスを経験したり、まともに食事ができず、自殺未遂などの精神不安が増している。教師たちは生徒に学科を教えるだけでなく、カウンセリングや生活支援にも力を割かなければならない逼迫状況が続いてきた。

 

 教師たちは、生徒の学校生活に不可欠なカウンセラーや看護師、司書などの増員を求めており、「私たちは公教育を守るために生計を危険にさらしてきたが、政治家たちはお金がないふりをして公教育を潰そうとしている。このたたかいは生徒たちの権利を守るためのものであり、公共の財産と生徒への公的責任を民間市場の競売台に乗せることへの抵抗だ」と訴えている。

 

 アメリカでは去年3月にウエストバージニア州で同じ要求を掲げて全州規模のストライキをおこない、業種や地域を越えた公共性の回復・強化を求める社会的運動となって要求を勝ちとった。それ以降、教師たちのストライキは、ケンタッキー、オクラホマ、コロラド、アリゾナ、ノースカロライナなど全米各地に波及している。

 

学校民営化反対を訴える教師や市民によるデモ行進(14日、ロサンゼルス)

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